バイスティックの7つの原則についてこれまでお話をしてきましたが、今回が最後になります。
最後のテーマは「個別化」です。
つい比較してしまう言葉
子育てをしていると、ついこんなことを思ったり言ってしまうことはないでしょうか?
「もう〇歳なんだから、これくらいはできるはず」
「弟はできたのに、お兄ちゃんはどうしてできないの?」
「おともだちの〇〇ちゃんはできるのに、なんでできないの?」
個別化とは何か
ソーシャルワークには、「個別化(こべつか)」という大切な原則があります。
個別化というと仰々しいですが、これはつまり
「目の前の子どもを、他の誰とも比べずに理解し、関わること」
ということです。
こう言うと、「特別扱い」だと思う人もいるかもしれません。
ですが、「個別化」とは「特別扱い」ではありません
その子の「わがまま」を許すこととも違いますし、単に「甘やかす」ということでもありません。
個別化とは、子どもを一人の「個人」として尊重し、性格、考え方、感じ方、成育歴、不安、困りごと、を理解するというものです。
同じ年齢、同じ学校、同じ性別でも、一人ひとりは違います。
その違いを「前提」に関わることが、「個別化」なのです。
宿題をやらない子への関わり
例えば、「宿題をやらない子」に対して
「何回言ったら宿題やるの!」
「みんなちゃんとやってるよ!」
「宿題やらないならスマホ禁止!」
といった声掛けをするとします。一見、正しい声かけのように思えますが、ここには
「なぜやらないのか・できないのか」という視点がありません。
「宿題をやらない子」を個別化の視点で見ると、「宿題をやらない」にも理由はさまざまです。
・問題が分からなくてできない
・完璧にやらなきゃと思って進まない
・学校でいろいろあって集中できない
・板書が苦手でそもそも内容が分からない
これ以外にも理由はいくつもあるでしょう。
親の目線から見ると、「やる気がない」だけと思ってしまうこともあるでしょう。ですが、そこには隠れた「つまずきの理由」があるかもしれません。
ちなみに、こんな声かけの仕方はどうでしょうか
「宿題、難しいの?」
「どこで止まってる?」
「分からないところある?一緒に見てみようか」
「一緒に1問だけやってみる?」
子ども一人ひとりによって“つまずき方”は様々です。
そのつまずきに合わせて関わることが、「個別化」なのです。
学校に行きたがらない子への関わり
では、もう一つ例を挙げてみます。「学校に行きたがらない子」に対して
「他のみんなは嫌でも我慢して行ってるよ」
「このままだと将来困るよ」
「言い訳はいいからとにかく行きなさい」
子どもが学校へ行きたがらないとき、親としては不安だと思います。仕事があったりすると余計に焦るでしょう。そんな時、上のような言葉をかけてしまうかもしれません。
ですが、こういったある種「突き放す」ような言葉は、子どもにとって「なにを言っても分かってもらえない」と感じる契機になることもあるのです。
「学校に行けない」という行動にどんな「つまずき」が隠れているのでしょうか?
もしかしたら、こんなことがあるかもしれません。
・朝になると頭痛や腹痛など体調が悪くなる
・教室に居場所がなく、行くだけでつらい
・先生との関係に不安がある
・失敗体験が積み重なって嫌になってしまった
「個別化」の視点で見れば、「学校に行けない」という行動にも固有の理由があります。
その場ですぐに「行く・行かない」の二択を迫ったり、「行かせる・行かせない」を親が判断したりするのではなく、こんな声かけに変えてみてはどうでしょうか?
「朝になると、どんな感じ?」
「一番しんどい時間っていつ?」
「朝からじゃなくて、午後だけならどう?」
判断や評価を親基準にするのではなく、その子の感じ方を基準に話を進めます。
「教室は難しいけれど、別室なら行ける」
「朝は無理だけど、3時間目ぐらいからなら大丈夫」
こうした選択肢を一緒に探すのも、個別化なのです。
個別化の大切さ
個別化は、一人ひとりが決して同じではないということを念頭に、「その子自身のペースを信じること」が重要です。
個別化を意識した関わりは、時に遠回りに見えるかもしれません。
ただ、その子に合わない方法で無理に進ませる方が、結果的に時間がかかることも多いというのも事実なのだと思います。
「できない・やらない」=「なまけている」と決めつけない
「他の子のできること」=「自分の子にもできる」という考えを押し付けない
どんなに小さな変化やほんの少しの前進を見逃さない
これらすべてが、「個別化」という考え方の姿勢なのです。
