「昨日できたのに今日はできない」
回復が一直線ではない理由
「昨日は外出できたのに、今日は部屋から出てこない」
「久しぶりに笑顔が見られたと思ったら、翌日はほとんど話をしなくなった」
「少し元気になったと思ったのに、また振り出しに戻ってしまったように感じる」
不登校のお子さんを見守る中で、このような経験をされた保護者の方は少なくないでしょう。
子どもに変化が見え始めると、保護者としてはうれしくなるものです。だからこそ、その後に再び元気のない様子を見ると、
「せっかく良くなってきたのに…」
「また後戻りしてしまったのでは?」
と不安になってしまいます。しかし、実はこうした状態は決して珍しいことではありません。むしろ、回復の過程でよく見られる自然な姿なのです。
私たちは「回復=右肩上がり」だと思いやすい
風邪をひいたとき、多くの場合は少しずつ熱が下がり、体調が良くなっていきます。
そのため私たちは無意識のうちに、
「回復とは、昨日より今日、今日より明日と良くなっていくもの」
と考えがちです。
ところが、不登校や心の疲れからの回復は、必ずしもそのようには進みません。
元気な日があったかと思えば、次の日は何もできなくなる。話せる日もあれば、話したくない日もある。
前に進んでいるように見えたり、後退しているように見えたりしながら進んでいくことが少なくありません。
一歩進んで、半歩下がる
回復のイメージとして近いのは、
「一歩進んで、半歩下がる」
という状態です。
例えば、
- 久しぶりに外出した
- 家族以外の人と話した
- 学校の話題に触れた
- 将来について考え始めた
こうした行動は、子どもにとって大きなエネルギーを使う出来事です。
大人から見ると当たり前に見えることでも、不登校の状態にある子どもにとっては勇気のいる挑戦です。
そのため、挑戦した翌日に疲れが出たり、しばらく休みたくなったりすることがあります。これは後退ではなく、エネルギーを使った後の自然な反応なのです。
「できたこと」が消えたわけではない
保護者の方が安心してほしいのは、
一度できたことは、決して無かったことにはならない
ということです。
例えば、自転車に乗れるようになった子どもが、翌日乗らなかったとしても、「乗れなくなった」わけではありません。
同じように、
- 外出できた経験
- 誰かと話せた経験
- 自分から動けた経験
は、子どもの中にしっかり積み重なっています。
今は休んでいるように見えても、その経験が次の一歩につながることがあります。
親が期待してしまうのは自然なこと
子どもに変化が見えたとき、
「このまま学校に行けるかもしれない」
「そろそろ元に戻れるかもしれない」
と思うのは自然なことです。それだけ、お子さんのことを大切に思っているからです。
しかし、期待が大きくなるほど、うまくいかなかったときの落差も大きくなります。そして、その焦りは思わぬ形で子どもに伝わることがあります。
「昨日できたんだから今日もできるよね?」
「せっかくだから続けてみよう」
「あと少し頑張れば学校に行けるんじゃない?」
こうした言葉は励ましのつもりでも、子どもにとってはプレッシャーになることがあります。
大切なのは「結果」より「変化」に目を向けること
回復期の子どもたちを見ていると、大きな成果よりも、小さな変化の積み重ねが大切だと感じます。
例えば、
- 表情が少し柔らかくなった
- 会話が増えた
- 興味を持つことが増えた
- 自分から何かを提案した
こうした変化は、目立たないかもしれません。しかし、心のエネルギーが回復してきているサインでもあります。
学校へ行けたかどうかだけで判断すると見えなくなってしまう成長が、実はたくさんあります。
保護者自身も休んでいい
子どもの回復を見守ることは、想像以上にエネルギーが必要です。
期待しては落ち込み、不安になっては希望を持つ。その繰り返しの中で、保護者自身も疲れてしまうことがあります。
だからこそ、
「今日はできなかった」
ではなく、
「昨日できたことがあった」
という視点を持ってみてください。
子どもの回復だけでなく、保護者自身の心にも少し余裕が生まれるかもしれません。
最後に
不登校からの回復は、一直線ではありません。
前に進む日もあれば、立ち止まる日もあります。時には後退しているように見えることもあります。
それでも、子どもたちは少しずつ、自分なりのペースで前へ進んでいます。
昨日できたことが、今日できなくても大丈夫。
その経験は決して消えていません。
焦らず、比べず、その子の歩幅を信じて見守っていくこと。それが、回復の道のりを支える大きな力になるのだと思います。
