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2026.01.17

非審判的態度 ~「評価しないこと」の難しさ~

非審判的態度

~「評価しないこと」の難しさ~

「非審判的態度」という言葉を聞くと、かなり強い言葉に聞こえると思います。
「非審判的態度」をマイルドに言い直すと、
「相手の良し悪しを評価するのではなく、一旦受け止めてあげる」
になるでしょう。


私自身の体験から

個人的な話になりますが、私は小学生のころから母子家庭で、母一人子一人の家庭で育ちました。

私が何かしでかすと、父がいないぶん、母が私を厳しく𠮟りました。
私が悪いのですから叱られて当然なのですが、私の気持ちとしては、母は「怖い存在」として一定期間あったと思います。

同時に、母はよく否定をする人でもありました。


「否定された記憶」

小学生の頃、将来の夢を聞かれた私は「大工さん」と答えました。
その時も母は、割と現実的な理由をつけて否定をしました。
子どもながらに、ひどくがっかりした覚えがあります。

中学生の頃、部活動を決める際に、絵を描くのが好きだった私は美術部に入りたかったのですが、それを母に伝えると即座に否定され、「運動部にしなさい」と言われました。

多少抵抗はしたように思いますが、結局私は、しぶしぶ運動部に入部しました。

結局3年間同じ部活を続けましたが、自分がやりたいこととは違うことを「させられている」という気持ちが強いままでいましたから、途中、数か月黙ってサボったりもしました。

当然顧問から母へ連絡が行き、学校に呼び出された私は、母と顧問にこっぴどく叱られました。


あの時の本音

その時の気持ちは、やったことへの反省よりも、
「だったら最初からやりたいことをやらせてくれればよかったのに」
でした。

結果的に、部活を「続けるか」「続けないか」の二択を迫られた私は、「続ける」を選びました。

怒った大人二人がかりで詰められて、「続けない」と主張できるほど、私は強い子どもではありませんでしたし、そんな空気でもなかったことを覚えています。


我慢することが当たり前だった子ども時代

思い返すと、私は何か嫌なことや困ったことがあったときに、多くの場合で
「我慢をする」
という選択をしていた子どもだったように思います。

そして、それは大人になった今でも尾を引いています。


子どもの頃の体験は、大人になっても続く

社会人になり、福祉の世界に足を踏み入れ、たくさんの子どもたちや保護者と関わっていく中であらためて思うのは、
「子どもの頃の体験は死ぬまで生き続ける」
ということです。

私自身、「自己主張のできなかった自分が悪い」と思ったこともありますが、すべてを子ども個人の責任にしてしまうのは絶対に違うと、今になって思うのです。


非審判的態度とは何か

ここまでかなり脱線した思い出話をしてきましたが、恨み言を言いたくてしたわけではありません。

「非審判的態度」について私は、
「相手の評価をするのではなく、一旦受け止めてあげる」
ことだと考えています。

ここで難しいのが、受け止めることよりも、
「評価(否定も肯定も)しない」
という点です。


否定しない=何でも許す、ではない

当たり前ですが、その行動が社会通念上明らかに「良くないこと」であるならば、軌道修正をしてあげなければなりません。

なんでもかんでも「肯定」することが良いわけではありません。

そして同時に、
「相手の善悪を評価し、悪なら否定して制御する」
ということでは決してない

ということを忘れてはいけないのです。


大人の役割とは

個人的な考えになりますが、大人は子どもの
「いざという時の添え木」
のような存在であるべきだと思います。

今まさに倒れようとしている時に、そっと支えてくれる。
そんな存在でいるだけで十分だと私は思います。

加えて、大人は子どもにとって
「危険地帯へ入らないための道しるべ」
のような存在でもあるべきだと思います。


支えすぎなくていい

少し傾いたぐらいで、わざわざ厳重に支える必要はありません。
行く道を1から作ってあげる必要もありませんし、行く先をすべて決めてあげる必要もありません。


子どもはバカではない

とある漫画のセリフに、
「子供はバカじゃないです。自分が子供の頃バカでしたか?」
という言葉があります。

これを読んだ時、私は心から納得できました。

子どもはバカではありません。

少しバランスを崩したぐらいなら、自分で回避できます。
こけて多少擦りむいたぐらいなら、構わず遊び続けられます。
自分の行きたい道ぐらいは、自分で選べます。
多少道を間違えたくらいなら、自分で元の道に戻ることができます。


最後に

「言われないとわからないこと」もありますが、
「言われなくてもわかること」
だってあるのです。

子どもの些細な行動に一喜一憂してしまうのは仕方のないことです。
ですが、すこしだけ、否定も肯定もせずに、
優しく 「がんばったね」 と声をかけてあげる。
そんな関わり方も、時には必要ではないでしょうか。


<hr>

代々木高等学院
社会福祉士/スクールソーシャルワーカー
建元 大吾

東京都渋谷区千駄ヶ谷5-8-2
TEL:050-3535-2797

2026.01.10

📘 統制された情緒的関与 ~親が疲れてしまわないために~

📘 統制された情緒的関与

~親が疲れてしまわないために~


🧒 子どもに限らず、「安心して話せる相手」とはどんな人でしょうか?

個人的には、
・急かさず話を聞いてくれる人
・自分の意見ばかり言わない人
・イライラしていない人
・すぐに否定しない人
などが浮かびます。


📌 バイスティックの7つの原則の中には、「統制された情緒的関与」というものがあります。

文字だけを見ると仰々しいですが、
ざっくり言えば
「相手に寄り添いつつ、決して情緒まで引っ張られない」
ということです。


🗣 たとえば…

・話し手が怒っている時、同じか、あるいはそれ以上に怒らない。
・話し手が不安になっている時、同じように不安がる姿を見せない。
・話し手が楽しく話している時には、一緒になって楽しんでくれる。


🧠 子ども側の心理として

例えば親が過度に心配をしたり冷たくなったりすると、当然ですが不安になります。
逆に楽しい話をしているのに、リアクションが薄かったり、妙に冷たくあしらわれたりしても同じように不安になるでしょう。

「心配させるかもしれない」
「きっと理解してくれない」
「怒られるかもしれない」
「嫌われたかもしれない」

そんな気持ちを抱いたとき、子どもは、親に相談するということをあきらめてしまいます。
他に相談する相手がいなければ、そのまま気持ちを抱え込むことになるでしょう。
抱え込むということは「我慢をする」ということです。


我慢には必ず「限界」があります。

人は永遠には我慢できませんし、
我慢していたものがある日急に煙のように消えてなくなるということもありません。

いずれは、我慢していたものがあふれ出てくるものです。

そして厄介なのは、人間の我慢はコップに注いだ水と違い、
どのようにあふれ出るかは人によって千差万別だということです。


👨‍👩‍👧 同時に親にも同じことが言えます。

楽しい感情ならいざしらず、
子どもの負の感情まですべて引き受け、
子どもと同じように怒ったり不安になったりしていると、当然親も疲弊します。

意図せず子どもに冷たい態度をとってしまうかもしれませんし、
うっかり思ってもいないようなことを言う可能性だってあります。

親には親の悩みや困りごともあるわけですから、
二人分の悩みがのしかかってくることになります。


💡 「情緒まで引っ張られない」とは

「感情に振り回されない」とも言い換えられます。

「統制された情緒的関与」は
「感情に振り回されずに自分を守りながら相手を支える」
ということを忘れないための合言葉

だと私は受け止めています。


🌱 子どもも人間、親も人間です。

感情に振り回されれば、
予期せぬ弊害が出てしまうことは十分あり得ることです。

無感情に生きろなどと言うつもりはありません。

楽しい時には子どもと一緒に笑い、
苦しい時には穏やかな気持ちでしっかり話を聞く。

それだけで、お互いに気持ちが楽になるのではないでしょうか。


代々木高等学院
社会福祉士/スクールソーシャルワーカー
建元 大吾
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-8-2
TEL:050-3535-2797

2025.12.09

📘「受容」とはなにか?~傾聴する力~

📘「受容」とはなにか?~傾聴する力~

前回、「受容とはなんなのか?」や、「受け入れる」と「受け止める」の違いなどを簡単にお話してきました。
では、「受容」を実践するとき、具体的にどのようにすればいいのでしょうか?


⭐「傾聴」で受け止め上手になる

「受容」を実践する際、重要なファクターになるのが 「傾聴(けいちょう)」 です。
「傾聴」とは、平たく言ってしまえば 「相手の話をしっかり聞くこと」

ところで皆さんは、こんな経験がないでしょうか?

・自分が話している最中に遮られて、最後まで話せなかった
・こちらは勇気を出して相談しているのに、相手がうわの空だった
・相談したいのは自分なのに、相手が自分の話ばかりする

もし自分が相談する立場で、話を遮られたり、聞いていないような態度だったりしたら…
おそらく「なんでこの人は私の話を最後まで聞いてくれないのだろう?」という気持ちになるでしょう。

私は「受容」=相手をありのまま受け止めること、とお伝えしました。
少なくとも、上で挙げたような態度は「受容」ではありません。


🎧 なぜ「傾聴」が重要なのか?

つらいことがあって相談したとき、相手が

  • 「私はこう思う」

  • 「そんなのおかしい」

  • 適当な相槌ばかり

といった態度であれば、おそらく二度と相談しないでしょう。
「話を聞く気がないんだ」という あきらめの気持ち が生まれてしまうからです。

そんな風にならないために、「傾聴」が必要になります。

「傾聴」の漢字を素直に読み解けば、
「相手の話に耳を傾けて聴く」 ということです。

その際に大切なのは次の3つ。

  1. 話を聴く環境

  2. 話を聴く時の表情や態度

  3. 話を聴く側の心構え


① 話を聴く「環境」

騒がしい場所よりも、静かで落ち着いた場所のほうが相談しやすいものです。
極端な例ですが、渋谷のスクランブル交差点より、静かな室内のほうが良いのは想像できますよね。


② 話を聴くときの「表情・態度」

しかめっ面の人よりも、穏やかな口調で時おり笑顔を見せてくれる人のほうが相談しやすい。
これは誰でもイメージできるはずです。


③ 話を聴く側の「心構え」

話すたびに割り込んだり、自分の考えを押しつけたり…
そんな態度では相談しやすい相手にはなれません。

「今は相手の話を聴く時間」
この心構えを持ち、実際に示してくれる人のほうが、相談相手として安心できます。


💡「自分の考え」を一旦横に置くことも大切

人には誰でも「考え方の癖」があります。

  • 「みんなやってるんだからやらなきゃ」

  • 「こうあるべきだ」

  • 「それぐらい大丈夫」

  • 「なんでこんなこともできないの?」

こうした考え方は、あくまで “自分の考え” であり、他者に当てはめるものではありません。
受容・傾聴を意識するときは、まず自分の考えを脇に置くことも大事です。


🌱 専門家でなくてもできる「傾聴」

社会福祉士など専門職の方は、もっと多くのスキルを用いますが、
保護者の方や先生、子どもとの関わりに不安を抱えている方は、そこまで高度な技術は必要ありません。

大切なのは、

「良き話し相手」であること
「自分の話をちゃんと受け止めてくれる相談しやすい相手」であること

この姿勢があるだけで、子どもたちは自然と心を開いて話をしてくれるようになります。


▶ 次回予告

次回は、
「統制された情緒的関与」
についてお話していきたいと思います。

 

代々木高等学院

社会福祉士/スクールソーシャルワーカー
建元 大吾

東京都渋谷区千駄ヶ谷5-8-2
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2025.12.07

📘「受容」とはなにか? ~「受け入れる」と「受け止める」の違い~

📘「受容」とはなにか?

~「受け入れる」と「受け止める」の違い~

かれこれ10年近く子どもに関わる仕事をしてきましたが、「自分はまだまだだな」と反省することが度々あります。一人ひとりに寄り添い、多くの声掛けやお話をしていく中で、一番の基本であり、かつ難しいのは「受容」だと私は思います。

「受容」とは、その子の存在をありのまま受け止め、それぞれの価値を認めることを指します。ここで重要なのは、「受け入れる」ではなく「受け止める」ということです。

例えば子どもがなにか問題行動を起こしたとき、その問題行動を受け入れてすべて許すことを「受け入れる」だと私は捉えています。さて、果たしてこれは大人として、親として、対等な人間として、適切な対応でしょうか?私は違うと思います。

“子どものどんな行動でも許してしまうこと”
“子どものわがままをすべて受け入れてしまうこと”

どちらも「受容」とは違います。

また、なんでも「受け入れて」はいけないのだから、子どもが問題行動を起こしたらとにかく叱ってまた同じことをしないようにする、というのも「受け止める」とは違います。

「受け止める」とは、一人ひとりが“同じ”ではなく“違っている”一人の対等な人間であるのが当たり前で、それぞれの人生(背景)を理解することに努め、そのうえで相手を尊重することなのだと思います。

先ほどの例で言えば、問題行動自体に目を向けるのではなく、その問題行動を起こすに至った「経緯」やその子自身のこれまでの「背景」に目を向け、一度その行動を受け止めてから今後どのようにしていくべきなのかを一緒に考えることが「受け止める」であり、「受容」なのだと思います。

そしてこの「受容」が、実践ではなかなか難しかったりします。なぜなら私たち人間は、「感情」に言動が左右される生き物だからです。

“子どもがいうことを聞かないので大声で叱ってしまった”
“子どもがわがままばかり言うので手をあげてしまった”
“仕事や家事のストレスで子どもにあたってしまった”

そういった気持ちもわかります。

人間ですから。

でもこれが、「人間なんだから仕方ないよね」で終わってしまうというのも違います。

私たちは「大人」ですから。
未来をになう子どもたちに対して多大な責任があります。

「子どもは親の背中を見て育つ」という言葉がありますが、正しくは「子どもは大人の背中を見て育つ」だと私は思います。
親の言葉や行動ももちろんですが、学校の先生や近所の大人、親戚、テレビや動画の中の人々、多くの大人が子どもに影響を与える存在なのだと思います。

子どもが自分らしく健やかに育つために、「受容」の心を忘れず、子どもの見本となる一人の「大人」としてあるために、我々は努力をしていかなければならないのでしょう。

さて、次回ももう少しだけ「受容」のお話をしていきたいと思います。

2025.11.19

📘 相談援助の原則 ~バイスティックの7つの原則~ 福祉の専門職を目指す中で必ず学ぶ、人間関係の土台となる大切な考え方をご紹介します。

相談援助の原則 ~バイスティックの7つの原則~

 昔の話になりますが、私は理学部の学生として大学を卒業した後、数年間の社会人経験を経て、福祉系の専門学校へ入学しました。そこで、相談援助についてゼロから学び直すことにしました。2年間の専門学校生活の締めくくりとして社会福祉士の国家試験を受験し、幸いにも合格。そこから本格的に福祉の世界へと足を踏み入れました。

 専門学校での学びの中で、さまざまな先生方の授業を受けましたが、必ずと言っていいほど耳にした実践理論があります。今回は、その中でも特に有名な「相談援助の基本原則」についてご紹介したいと思います。

 相談援助を学ぶとき、おそらくどの教科書にも必ず記されている原則があります。それが、アメリカの社会福祉学者バイスティックが提唱した7つの原則、いわゆる「バイスティックの7つの原則」です。まずは、この7つを簡単に紹介していきましょう。

1. 個別化

 一人ひとりの人間にはそれぞれの「個性」があります。たとえ似た特徴を持っていても、誰一人として同じではありません。その人に合った形で関わることが大切です。

2. 意図的な感情表出

 どのような感情であっても、安心して自由に表現できるように関わる必要があります。ポジティブな感情もネガティブな感情も、素直に出せる環境づくりが求められます。

3. 統制された情緒的関与

 相談援助を行う側は、自身の感情を十分に自覚し、適切にコントロールしながら、相手への言動や反応に注意を払う必要があります。

4. 受容

 相手の発言や行動を評価せず、「あるがまま」に理解し、受け止める姿勢が大切です。「受け止める」という態度こそが信頼の第一歩です。

5. 非審判的態度

 自分の価値観や倫理観で相手を判断してはいけません。ましてや一方的に非難するような態度は避けるべきです。

6. 自己決定

 相手が自分自身の意思で選択・決定できるよう支援し、その意思を尊重することが重要です。

7. 秘密保持

 相談援助の中で知り得た情報は、決して他者に漏らしてはいけません。その信頼の上にこそ、支援関係が成り立ちます。

 これら7つの原則は、相談援助に関わる人にとって守るべき基本的な姿勢であり、実践上の大切なルールです。一つひとつを見ると、「当たり前のことでは?」と思うかもしれません。しかし、実際の援助場面では、この「当たり前」をどれだけ丁寧に実践できるかが問われます。

 バイスティックは、人は誰しも「弱点」や「課題」を抱えていても、生まれながらに尊厳を持つ存在であり、他者から価値ある人間として受け入れられたいと願っている――そんな考えを基盤にこの原則を示しました。

 これらの原則は、福祉や援助の専門職だけでなく、「親から子へ」「教師から生徒へ」といった日常的な人間関係にも当てはまる、非常に大切な考え方だと思います。

 次回からは、これらの原則のいくつかを取り上げながら、日々の子育てや人との関わりに役立つヒントを交えてお話ししていきます。
 福祉や相談援助の考え方は、実は家庭や学校の中でも活かせる場面がたくさんあります。
 「うまく話を聞いてあげられない」「つい感情的に言ってしまう」――そんなときにこそ、これらの原則が助けになってくれるかもしれません。
 最初のテーマは「④受容」。お子さんとの関係づくりや、ご家庭での関わり方を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

代々木高等学院
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-8-2
050-3535-2797
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社会福祉士/スクールソーシャルワーカー
建元 大吾

 

2025.10.11

📱 「Z世代」とスマホ、そして不登校について考える ―― NPO法人21世紀教育研究所より

「うちの子、スマホばかり見ていて…」
そんな声を多く耳にします。
でも、スマホの向こうには子どもなりの“居場所”や“心の理由”があるのかもしれません。
今回は、Z世代とスマホ、不登校をめぐる“親子の気持ち”に寄り添ってみます。

 

「Z世代」という言葉が当たり前のように使われ始めたのはいつのころからだったでしょうか?
「Z世代」とは、2025年時点で13歳~28歳のデジタルネイティブ世代。
現在中学生や高校生の子どもたちもここに含まれます。

この世代の子どもたちは、ごく自然にスマホ(スマートフォン)を使い、
YouTubeやSNSなど、様々なネットメディアを通じて発信・交流を行っています。


スマホと不登校の関係

この「Z世代」の中には、学校に足が向かない、いわゆる「不登校」の子どもたちもいます。
そして、今の中高生を考えるうえで“スマホの存在”を無視することはできません。

実際、保護者の方からはこんな声をよく聞きます。

  • 夜遅くまでスマホでゲームをしている

  • SNSで同じ趣味の人と交流しているみたい

  • うちの子はスマホに依存している

  • 取り上げたら暴れてしまった

「不登校のきっかけは別だが、長期化の原因はスマホだと思う」
「スマホのせいで悪化した」
――そんな声も少なくありません。

確かに、スマホが影響しているケースもあるでしょう。
しかし私たちは、スマホが“不登校の根本原因”である事例はそれほど多くないと考えています。

スマホはあくまで「手段」。
嫌なことから逃れるための、または自分らしくいられるための“セーフゾーン”なのです。


子どもたちの本音に寄り添う

実際に子どもたちと話してみると、こんな声が聞こえてきます。

  • 学校にも家にも居場所がない

  • いい子でいることに疲れた

  • 勉強についていけなくなった

根本には“心の痛み”があることが多いのです。

だからこそ大切なのは、根気強く寄り添うこと。
子どもたちの気持ちを受け止め、「これからどうしていきたいか」を一緒に考えることです。


保護者にも「寄り添い」が必要です

一方で、保護者もまた人間です。
「何とかしてあげたい」という思いで試行錯誤を繰り返し、
思うようにいかないとストレスを抱え、やがて限界を迎えてしまうこともあります。

その結果、思いもよらない形で子どもに影響が出てしまうこともあります。

ここで大切なのは、「我慢しない」こと。
少しでも苦しいと感じたら、誰でも構いません。
どうか話をしてみてください。

できるなら、相談援助の専門職に話してみてください。
きっとあなたに寄り添ってくれます。

子どもに寄り添いが必要なように、親にも寄り添いが必要です。
誰かに気持ちを話すことで、「自己覚知」――自分の心と向き合う第一歩になります。

親が自分と向き合うことは、結果的に子どもと向き合うこと。
私たちは、そんな親子の「寄り添い」を支えていきたいと考えています。


📖
代々木高等学院
社会福祉士/スクールソーシャルワーカー
建元 大吾

2025.04.15

<ことばは生きている>

近年では、次々オートメンション化され日常生活の中でコミュニケーションの遣り取りが少なくなってきている。先日も行きつけの中華店で餃子のお持ち帰りを頼もうとしたら、定員さんに「そこの自販機でお願いします。」と言われ、あーあここも自動化になってしまったのかと、ボタン操作をした。今ではスーパーでもどこでもかなりオートメーション化され、店の人とのコミュニケーションが少なくなってしまった。定員さんとのちょっとしたことばの遣り取りが心の癒やしになっていたのでとても残念に思う。そういえば以前新聞のコラムで読んだ1文が今でも心に響いている。

「声は体である。体とは肉体ではない。体とはことばである。それは姿勢であり、歩き方や身振りであり、声であり命である。」と書いてあった。まさに声は、体であり命である。人は、ことばを通して意思疎通する。自分を理解してもらうのも、相手を知るのもことばを通してである。

 夏休みも終わり、2学期が始まり1週間くらい立って養護教諭が、一人の男子生徒を連れて相談室を訪れた。彼は夏休みが終わって2日目から学校でも家でも突然全くしゃべらなくなってしまったという。登校初日は普通に友達とも話していたが、次の日から家でも学校でも全て筆談となってしまったそうだ。

 相談室に入室の際に、養護教諭に促されてぴょこんと頭を下げた。表情はニコニコしていた。私が「今日は」というとニコニコしながらまたぴょこんと頭を下げた。表情は良いが、何かを訴えるような眼差しは見て取れた。しかし、私は唐突な質問を彼にした。「何か小動物を飼っている?」彼はびっくりしたように「何も飼ったことがない。」と紙に書いてきた。私は勝手にしゃべり続けた。「小鳥もかわいいし、ハムスターやミドリガメ、ウサギもかわいいね。猫や犬もかわいいし。」と言うと彼はニコニコしながらうなずいていた。「何か飼ってみたい小動物有るかな?」と聞くと「ある。」と筆談で返してきた。「そうなの、何かな?」と聞くが黙ってニコニコしていた。その後もたわいない話をし、筆談の遣り取りを40~50分した。最後に「もし良ければ来週もおいでね。」と告げるとニコニコ頭を下げ退室した。

 1週間後に彼一人で相談室を訪ねてきた。ドアをノックし、ニコニコと頭を下げ入室した。手には紙切れをもっており、見せて欲しいというと「ミドリ亀を2匹父親に買ってもらった。」と書いてあった。「名前はつけたの?」と聞くと2匹の亀の名前を書いてくれた。「どんな亀?」の質問に1匹ずつ細かく特徴を書いてくれた。彼の観察力には素晴らしものがあった。私は「すごい、かわいいでしょう、餌はどうしているの?」など次々彼に質問した。彼はその都度筆談で返してきた。私は彼が書くのを期待しながら待っていた。その後彼と筆談によることば遊びを始めた。お互いが知っている名詞を5分間でどっちが多く書けるか競争をした。また、ことばのしり取りゲームでは、彼はニコニコしながら次々紙に書いた。

筆談によることば遊びを始めて3ヶ月位経った時、彼が「病院の心療内科の先生に入院したらどうかと言われた。」と書いた紙を見せた。私は、「君はどうしたい?」と紙に書くと「入院したくない」と書いた。一瞬彼が暗く不安げな表情をしたのを見て、「君が決めればいいよ。入院したくないのだったら入院しなくてもいいと思うよ。」彼はニコニコしながら「分かった。」と書いてきた。その後も筆談によることば遊びは続けた。彼は入院をしなかったが、相談室には毎週訪れた。私は、彼からの全身のエネルギーを感じながら何も考えずにことば遊を一緒に興じた。時々笑い声を聞くようになった。5ヶ月位立って放課後に部活動を見ていた彼が、「部活にでようかな。」と言ったのを彼の側にいた友人が聞き、担任に伝えたようだ。彼は夏休み明けからずっと保健室登校をしていた。保健室で勉強をして、放課後は一人で帰っていたようだ。

 半年も経った頃、教室にも入れるようになり、徐々に前の生活に戻った。養護教諭からは、随時報告を受けていた。

「ありがとうございました。」と、彼が暫くぶりに相談室を訪れた。私は初めて彼の声を聞いた。可愛らしい顔に似合わず野太い声に驚き、養護教諭に「あんなに野太い声だったの、がっかりした。」と言って笑われた。

 5ヶ月間全く話せず、筆談生活を続けた彼はどんなに辛かっただろう、私は最後まで緘黙になった原因は聞かなかった。話せなくなったこと以上に辛いことがあったのだと思うから。彼とは体全体で筆談によることば遊びを心の底から楽しんだ。言霊ということばがあるけど、彼と私の繋ぎは筆談による言霊だったと思う。筆談による言霊は、かれにとっても私にとっても体全体であり、命であった。

                      NPO法人21世紀教育研究所

                               向井幸子

 

臨床心理士
向井幸子プロフィール(通称さっちゃん先生)
 
1993年不登校という言葉もまだなかった時代、まだ日本で黎明期のオルタナティブスクール・スタッフとして勤務。そこで友人、教師、学校、家庭、自分自身などで悩み葛藤する数多くの生徒と出会い、臨床心理士として活動を始め、延べ数万人の支援を実施。
その後、数多くの実績を買われ公立小・中学校の教員のためのスーパーバイザーとして活躍し通信制高校カウンセラーを経て現在NPO法人21世紀教育研究所シニアカウンセラー

2024.09.04

《親の本音と子の本音》

子どもにとって成長と共に家族のイメージが移り変わって行く。子どもにとっては、幼い頃に包容力と慈しみで輝いていた家族が思春期の頃になると古い価値観を持って押しつけ介入してくる、うっとうしい存在でしかなくなる。親は、先のことを心配して子どもに愛情を持って接し、アドバイスしているのだと思っているが、子どもの側からはうっとうしい、放っておいて欲しいと拒絶するようになる。やっかいなのは、コントロール感覚と愛情とがグラデーションになっていることだ。

「子どもの将来を思ってこそ」と親が関心を持ってコントロール願望を発揮すればするほど、子どもの方は親のエゴとしか受け取れなくなってしまう。

親は、「小さい時は素直で優しい子だったのに、急に反抗的になってしまった。この先が思いやられる。」と、先のことを心配する。しかし、反抗期がないことの方が心配である。

家族といえども価値観はひとり一人が違って良い。人にはそれぞれマイルールがある。家族といえども父・母・兄弟・姉妹とみな自分なりのマイルールを持っている。お互いに他の人のマイルールを認め、参考にしながら自分のマイルールと上手く融合させていくと良いのだが、そんなに上手くいかない。お互いが正論を主張するのではなくグレーゾーンの部分を持ち、「そんな意見もあるのだな~」と、思うことが必要だ。

文化の移り変わりと共に価値観も変わってくる。今の時代に求められているものは何かを考えるのだが、それを追求していく中で、守るべきこと、変えるべきことは何かを柔軟に対応できる思考が大切だと思う。

 スイミングアドバイザーの岩崎恭子さんが以前こんなことを話していた。「私の母は、○○しなさいと、言うことは全く無かった。私は、○○しなさい。と言われた方がどんなに楽だっただろうと思った。でも母は、何かあっても何も言わずに見守っていた。だからこそ私は、自分で考え、自分で行動し、自分で責任を持てるようになって、強くなれたのだと思います。」黙って見守ることはかなり難しいと思う。ついつい口が出てしまいます。

 でも、子どもはしっかり見守っていてあげることで、自分で考え成長していきます。

子どもからSOSが出された時、何かアドバイスを求められた時、子どもと一緒に考え、サポートすれば良いのです。黙って見守るのは、親としてかなり葛藤があります。親は、子どもの行うことや失敗が先に分かってしまうからです。そこをぐっと我慢して見守ることで親も子どもと共に成長するのだと思います。

                      

NPO法人21世紀教育研究所

向井 幸子

臨床心理士
向井幸子プロフィール(通称さっちゃん先生)
 
1993年不登校という言葉もまだなかった時代、まだ日本で黎明期のオルタナティブスクール・スタッフとして勤務。そこで友人、教師、学校、家庭、自分自身などで悩み葛藤する数多くの生徒と出会い、臨床心理士として活動を始め、延べ数万人の支援を実施。
その後、数多くの実績を買われ公立小・中学校の教員のためのスーパーバイザーとして活躍し通信制高校カウンセラーを経て現在NPO法人21世紀教育研究所シニア

2024.08.22

《引きこもりのO君が立ち上がった》

O君が母親と相談に来室したのは、中学校卒業後5年が経っていた。母親と2人で、毎日周囲に気を遣いながら、そっと生活していたそうだ。朝母親が出勤した後は、窓のカーテンは全て閉め、電話にも一切出ず、母親に買ってきてもらった雑誌、漫画などを読み、ひたすら母親の帰宅を待っていたという。母親は、高校進学もせずアルバイトなど働く意欲を見せない彼を責めることもなく、彼の意に任せていたと言う。そんな彼だが、母親とのコミュニケイーションは結構あったようだ。5年くらい経ったある夕食時に「俺も高校へ行ってみようかな。」と、つぶやいたそうだ。母親が、「一緒に高校探ししようか?」に、「高校の勉強がしたくなった。」と言い出した。早速幾つかの高校のパンフレットを取り寄せ、彼に合いそうな学校を2人で検討して、或るサポート校に決めた。まずは、見学に行くことになって電車に乗ったが、彼は空いている席があってもドアの側に立ち、じっと外の景色を眺めていたという。人に見られることにかなりの恐怖感を持っていたようだ。彼は陽に当たることもなかったので、色白でブヨブヨと太り不健康そのものだった。

高校と話し合い、初めは月に2日~3日くらい通えれば良いことになり、母親の勤務の都合に合わせて、一緒に登校し午前中のみの半日登校というフリースタイルでスタートした。スタッフの対応にもオドオドし、やっと蚊の鳴くような声で一言三言しゃべれたという。

段々スタッフとも慣れ、登校の日数や教室に居る時間も長くなり、週2日くらいになってくると、1人で登校すると言い出した。彼は、学校での様子ばかりではなく電車の中でも感じたことを母親に告げている。「若いカップルがイチャイチャしてみっともない。」「子どもが漫画を読みながらうるさかった。」など結構観察していたようだ。学校では、廊下で他の生徒とすれ違っても体を硬く緊張していたが、徐々に慣れたようだ。教室では、一番後ろの決まった席で授業を受けていたと言う。帰宅してからは、板書したノートを見、教科書を一生懸命に読んでいたと母親が話してくれた。なんとか学校は出られても、この先が不安ですと本人と母親で将来についての不安も含め相談に見えたのだった。

彼なりに一生懸命考え一歩を踏み出したのだから、大丈夫です。これから先何があっても自分で着実に考え、歩んで行くと思います。自信を持ってくださいと、彼と母親に伝えた。

厚労省の引きこもりの定義は、「様々な要因の結果として社会参加を回避し、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念」と謳っている。引きこもりになりやすい人の特徴として、真面目で頑張り屋さん、自己肯定感と自己効力感が低い「自分は誰にも必要とされない」と、存在意義を自分で否定してしまう。人目を気にする。口下手で不満を溜めがち。口下手ゆえ周囲と上手く関係が築けず、うっぷんを吐き出せないで、自己防衛として人と交わりを絶とうとし、引きこもってしまう。まさに彼がそうであった。彼は、その後卒業し、アルバイトからスタートし、将来は小さな会社でも良いから定職に就きたいと母親に言ったそうだ。後日談として、母親が話してくれた。

                     NPO法人21世紀教育研究所:向井幸子

臨床心理士
向井幸子プロフィール(通称さっちゃん先生)
 
1993年不登校という言葉もまだなかった時代、まだ日本で黎明期のオルタナティブスクール・スタッフとして勤務。そこで友人、教師、学校、家庭、自分自身などで悩み葛藤する数多くの生徒と出会い、臨床心理士として活動を始め、延べ数万人の支援を実施。
その後、数多くの実績を買われ公立小・中学校の教員のためのスーパーバイザーとして活躍し通信制高校カウンセラーを経て現在NPO法人21世紀教育研究所シニアカウンセラー

2024.08.21

「子どもの伸び代を信じますか?」

最近、中学生で不登校になっているお子さんを持つ保護者相談を受けていて感じることがある。

「家にいても勉強をするようすも見られなし、ただユーチューブを見、ゲームばかりしていて、目標を持とうともしないし、なんとなく日々を過ごしているような感じで、歯がゆい思いで、見ていてイライラしてしまうのですが、どう対応したら良いのでしょうか?こんなんで高校進学は難しいですよね。」と、母親が心配して相談する。「高校進学するに当たってお子さんと話をしたことはありますか?」と、聞くと「話そうとすると“うるさい”と言って逃げてしまうのです。」困った顔で母親が応える。

「実は、お子さんが一番気にしているのです。」そう、不登校で家に居て何か頭の中がモヤモヤしている。気がかりのことがあると思っているのは、本人が一番強いかもしれません。今ここで足踏みして停滞していますが、彼なりに悩み考えているのです。そしてその子なりにスローステップではあるが、成長しているのです。

ここでストップしているが、この子に合った伸び代で成長しているのだと、親がちょっと視野を広げて見守ってあげてください。そして、子どもの様子を見て時間を作って話し合いをしてみてください。子どもの方から“どう思う?どうだろう?¨という疑問形の問いが出てくるような聞き方、話し合いが大事です。親は、ゆったりした気持ちで子どもの発言を待つことが第一です。

以前、小6の時の検査結果ですがとか、中1の時のWISC検査の結果です。と、検査表と所見を持ってこられ、「児相で障がいレベルとは認められず、手帳を出してもらえなかったのですが、将来の進路先のことや仕事のことが心配です。」との相談を母親や両親から受けたことが数回あった。検査結果表・所見からは多少の偏りはあるものの特に気にするレベルではないと思い、「家で特に何かお困りのことはありますか?」と、尋ねると「特に生活上は普通です。私に質問するときは、多少しつこいですが。」固執性が検査結果にも多少表れている程度。

「お母さん、具体的に納得できるように話して上げて下さい。そのうち変わってきますから。」

子どもの伸び代は一人ひとりによって違いますが、急にしっかりしたことを言って来て、びっくりさせられる場合があります。自分なりに一生懸命に考えていたのだと思います。停滞したままではないのです。その子の伸び代を伸ばそうとしている時期なのだと、見守りながらちょっと待って上げて下さい。

高校への進学は、色々なパターンがあり、高校進学したい意志さえあれば必ず受け皿はあります。安心して、今はしっかりと子どもと向き合ってください。

                          NPO法人21世紀教育研究所

                                   向井幸子

臨床心理士
向井幸子プロフィール(通称さっちゃん先生)
 
1993年不登校という言葉もまだなかった時代、まだ日本で黎明期のオルタナティブスクール・スタッフとして勤務。そこで友人、教師、学校、家庭、自分自身などで悩み葛藤する数多くの生徒と出会い、臨床心理士として活動を始め、延べ数万人の支援を実施。
その後、数多くの実績を買われ公立小・中学校の教員のためのスーパーバイザーとして活躍し通信制高校カウンセラーを経て現在NPO法人21世紀教育研究所シニアカウンセラー

2024.08.19

親は不登校生とどう対峙するか

最近の不登校相談では、一人っ子家庭の相談が多くなっている。兄弟がいないので、小さい時から大事にされ、喧嘩することも誰かと争うことなどない無刺激の中、安全地帯に座している一人っ子、子供の減少傾向はここでも顕著に表れているようだ。

 自分から何かにチャレンジしようとしても、親からはストップがかかり、自分の意図した方向に向かわず気が付いたときは、自分は何をやっているのだろうと、力が抜けた状態になっている。

 子どもが段々成長し、思春期になると心のモヤモヤは大きくなってくる。子どもは世間の情報や仲間からの情報に敏感になっている。このまま学校に行くのはどうなのだろう、ハタっと考えてしまう。まして家では天下だったのが、学校という集団の中では自分の感情を抑えてしまうので、かなり精神的に疲れる。そんな子どもの姿を見れば親としても、心配にならざるを得ない。しかし親はここで、じっと我慢して子どもを見守ろう。こどもの方から言葉を掛けてくるまで。また、子どもが不機嫌になり当たり散らしても、さらりと交わす術を身につけよう。と、同時に出てくる言葉が不退転である。

子どもが甘えて当たり散らす、部屋に黙って閉じ籠もってしまった時、たださらりと交わしていれば良いだけではない。ここで親としての判断が求められる。親として絶対にここは引けない、子どもに分かって欲しいと思ったら、正面から子どもと対峙すべきだ。

 以前著名な心理学者が、不登校の親と相談した時の話である。不登校の子を抱えた親の訴えは、子どもが毎日父親に「今日はこれを買ってきて欲しい。そうしたら明日は学校に行くから。」と、登校を条件に日々お土産を要求していた。ある日、非常に高価なマウンテンバイクを要求された父親は、意を決して子どもに自分の給与明細書を見せ、家の生活状況を話した。「今、俺にできることはここまでだ。お前が納得できないのなら、この家から出て行ってもかまわない。」と、言ったそうだ。親としては苦渋の決断だと思う。次の日、子どもは一人で自転車屋さんに行き、自分が貯めていたお金を全部出し、「中古で良いのでこの金額で帰るマウンテンバイクを買いたい。」と、店主に相談したそうだ。店主は古いマウンテンバイクを修理し、子どもに売ってあげた。彼は、古いマウンテンバイクを大事に丁寧に扱い、次の日から学校に登校し始めたそうだ。

 父親からその話を聞いた先生は、父親が息子と不退転で対峙したことが、息子の心に響いたのだと言っておられた。

 この話で大切なことは、ここは絶対に譲れないと思ったら、正面から不退転の覚悟をもって、子どもとしっかり対峙すること、そのことを頭に入れ、粘り強く子どもを見守って欲しいと思う。

 子どもは、親が不退転になって真剣に訴えることは、必ず心に響くものだ。

                                  2024/8/7

                         21世紀教育研究所:向井幸子

向井 幸子
臨床心理士
向井幸子プロフィール(通称さっちゃん先生)
 
1993年不登校という言葉もまだなかった時代、まだ日本で黎明期のオルタナティブスクール・スタッフとして勤務。そこで友人、教師、学校、家庭、自分自身などで悩み葛藤する数多くの生徒と出会い、臨床心理士として活動を始め、延べ数万人の支援を実施。
その後、数多くの実績を買われ公立小・中学校の教員のためのスーパーバイザーとして活躍し通信制高校カウンセラーを経て現在NPO法人21世紀教育研究所シニアカウンセラー

2024.07.04

「通信制高校の仕組みを徹底解剖!授業から卒業までの全過程」

通信制高校の仕組みについて、入学から卒業までを詳しく解説。
「初めての通信制高校:基礎から学ぶ入門(仕組み)ガイド」

1. 通信制高校とは?

通信制高校は、従来の全日制高校とは異なり、自宅での学習を主とする高校教育の一形態です。自分のペースで学習を進めることができるため、仕事を持っている人や、特別な事情で学校に通えない人にとって、非常に魅力的な選択肢となります。通信制高校の学習方法は、主にオンライン授業や教材を使った自主学習が中心となり、必要に応じてスクーリング(対面授業)を行います。


2. 通信制高校の仕組み

通信制高校の学習は大きく分けて以下の3つのステップで進行します。

  1. 教材の配布と学習計画

    • 入学時に学校から配布される教材を使って、自宅で学習を進めます。学習計画は自分で立てることができ、自分のペースで進められます。
  2. レポート提出

    • 学習が進むと、定期的にレポート(課題)を提出する必要があります。レポートは学校の先生が採点し、フィードバックをもらいます。
  3. スクーリング(対面授業)

    • 一定の頻度で学校に通い、対面授業や実習を受ける必要があります。スクーリングの頻度や内容は学校によって異なりますが、一般的には月に1回程度行われます。

3. 通信制高校のメリット

通信制高校には、多くのメリットがあります。

  1. 自由な時間管理

    • 自分のペースで学習を進められるため、仕事や家庭の都合に合わせて勉強時間を調整できます。
  2. 多様な学習スタイル

    • オンライン授業や教材学習、スクーリングなど、多様な学習スタイルを組み合わせることで、自分に合った方法で学習ができます。
  3. 幅広い選択肢

    • 通信制高校は全国に数多くあり、地域や学費、カリキュラムなど、自分に合った学校を選ぶことができます。

4. 通信制高校のデメリット

一方で、通信制高校にはいくつかのデメリットもあります。

  1. 自己管理の難しさ

    • 自分で学習計画を立て、進める必要があるため、自己管理能力が求められます。サボり癖がある人には向かないかもしれません。
  2. 孤独感

    • 自宅での学習が中心となるため、同級生と直接交流する機会が少なく、孤独感を感じることがあります。
  3. スクーリングの負担

    • 対面授業に参加するための交通費や時間の確保が必要となります。遠方に住んでいる場合、負担が大きくなることがあります。

5. 通信制高校の選び方

通信制高校を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

  1. 学費と支払い方法

    • 学費は学校によって異なるため、事前に確認し、無理のない範囲で支払える学校を選びましょう。
  2. カリキュラムの内容

    • 自分が学びたい内容や進路に合わせたカリキュラムが提供されているか確認しましょう。
  3. サポート体制

    • 先生やスタッフのサポート体制が充実しているか、困ったときに相談できる環境が整っているかを確認しましょう。
  4. スクーリングの頻度と場所

    • スクーリングの頻度や場所が、自分の生活スタイルに合っているか確認することが重要です。

6. 通信制高校の学習生活

通信制高校での学習生活は、自分でスケジュールを管理し、計画的に学習を進めることが求められます。自宅での学習環境を整えることが大切であり、集中できる場所や時間を確保することが成功の鍵となります。また、定期的にスクーリングに参加し、先生や同級生との交流を図ることで、学習意欲を高めることができます。


7. 通信制高校の卒業後の進路

通信制高校を卒業した後の進路は多岐にわたります。大学や専門学校への進学、就職、または自営業を始めるなど、様々な選択肢があります。通信制高校で身に付けた自己管理能力や自主性は、社会に出てからも大いに役立ちます。


8. 通信制高校を選ぶべき理由

通信制高校は、自分のペースで学習を進めたい人や、特別な事情で全日制高校に通えない人にとって、非常に魅力的な選択肢です。自由な時間管理や多様な学習スタイルが、自分に合った学びを提供します。自己管理能力が求められる一方で、サポート体制が充実している学校を選ぶことで、安心して学習を進めることができます。


まとめ

通信制高校は、従来の全日制高校とは異なる学びのスタイルを提供します。自分のペースで学習を進めることができるため、多様なライフスタイルに対応しています。通信制高校の仕組みやメリット、デメリットを理解し、自分に合った学校を選ぶことが大切です。通信制高校での学びが、あなたの未来を切り開く大きな一歩となることを願っています。

2024.06.12

言葉が独り歩きした「発達障害」

 過日新聞に目を通していたら、【「発達障害」言葉が独り歩き】という小児科医 成田 奈緒子先生の記事が目にはいった。そうだよねと、一気に読み込みその通りだと納得した。近年「発達障害」ということばを良く耳にする。学校でも、幼稚園や保育所、会社、街中と「あいつ発達系だよね」と仲間同士で陰口を言ったり、「○○ちゃん発達障害ではないでしょうかね。」と、幼稚園の先生や保育所の保母さんに医療機関の受診を進められ、保護者が不安になり慌てて医療機関を探した話を聞く。

 ここ10年あまりで一気に「発達障害」といわれる人が上昇した。成田先生は、文科省の調査の結果だけを見ると、発達障害の可能性がある子どもは、2006~2019年の13年間で10倍に増えたことになるという。でもこの調査は専門家が行ったものではなく、主観的に「可能性がある」と評価した結果が反映されたものだそうだ。専門家は、綿密に生育歴や診断基準に照らし合わせ行動や情緒障害などについて見極めるそうだ。成田先生は、「発達障害というレッテル」を貼られることで、親が不安に陥ったり虐待が起きてしまうことを懸念し、安易に診断はしないと述べられていた。また、成長期の子どもの脳は、柔軟で現在の状態がずっと続くものではなく良質な睡眠と生活のリズムの安定が大事であることも指摘していた。

 また、小児科医の鷲見 聡先生も「発達障害の謎を解く」という本で、発達障害ブームを振り返っての文中で、発達の多様性に対する許容範囲が狭くなっているようだと指摘している。例えば、ADHDと診断されたお子さんが年齢を重ねる毎に大きく変化し衝動性が減少して行き、社会生活上適応していく例も多くある反面、ネガティブな体験を積むことにより逆に不適応状態が深刻になる例もあると述べている。

 多様な神経発達症郡(発達障害)だからこそ、早期から親子の精神的安定と愛着形成、集団生活のルールや生活習慣を身につけるための支援が大切であると述べられていた。

 かって、小学校入学に際しての就学相談で、有名なミュージッシャンのお子さんが「多動と注意散漫」の主訴で来室されたが、保護者の話では夜遅くまでミュージッシャン仲間が出入りし、子どもの安定した睡眠がとれてなかったことが、昼間の子どもの行動に影響していたことが分かった。

 生活リズムの安定と、親が子に自己肯定感を育むような関わりが大切であることを強く感じた例である。生活リズムを改善したが、どうしても日常生活に支障をきたすような場合には、医療機関に相談したり福祉の支援を活用するのが適切であると思う。子どもの成長には個々に特徴があり、伸び幅も違っていると思うので、親が慌てて心配のあまり先にいろいろ動き回るのは、理解できるが、二次的な精神障害にもつながっていく例も多々あるので、子どもにじっくり関わりながら愛着形成を築いていく必要があるのでは無いかと思う。

文責:21世紀教育研究所 向井 幸子

向井 幸子
臨床心理士
向井幸子プロフィール(通称さっちゃん先生)
 
1993年不登校という言葉もまだなかった時代、まだ日本で黎明期のオルタナティブスクール・スタッフとして勤務。そこで友人、教師、学校、家庭、自分自身などで悩み葛藤する数多くの生徒と出会い、臨床心理士として活動を始め、延べ数万人の支援を実施。
その後、数多くの実績を買われ公立小・中学校の教員のためのスーパーバイザーとして活躍し通信制高校カウンセラーを経て現在NPO法人21世紀教育研究所シニアカウンセラー

2020.06.03

心の問題とADHDの見分け方。

心の問題とADHDの見分け方。

 心の問題とADHDの見分け方はどうしたいいのでようか。文部科学省の定義にあるように、小さい頃からADHDの症状があったかどうかが重要にになります。
ADHDは先天的なものなので、小さい頃から症状が見られますが、心の問題からくるものは、ある程度の年齢になってから、その症状があらわれます。中学生などの思春期頃から症状が出始めたり、何かトラウマになるような出来事に遭遇したあとから症状が出始めたときは、心理的な問題と考えていいでしょう。こうした場合には、ADHDとしての対応ではなく、心理治療法を中心にケアしていくことになります。
 では、ADHDであった場合、どのような対応法があるのでしょうか。まず投薬です。ADHDに関しては、ある程度発現メカニズムが解明されています。そのため、それにきく薬が開発されています。ただし、治療薬とゆうよりは、症状を抑える薬であり、薬...の効果が切れるとADHDの症状に戻ってしまいます。また、投薬の効果には個人差があるので、必ず医師の指示のもとで服薬してください。
 他には、環境調整が挙げられます。例えば、勉強への集中時間が短いのであれば、授業時間を短く区切って集中時間にあわせたカリキュラムをつくったり、注意の転動が大きいのであれば、注意が逸れにくいように学習環境をブース型の半個室状態にしたり、片付けができないのであれば、元の場所に戻すのではなく、片付け箱を準備して、その中に全部物を入れるようにして散らかるのを防いだりするなどです。こうしたやり方は、ADHDの症状を軽減させるやり方ではなく、ADHDの症状を前提として生活環境や学習環境を準備しようというやり方です。この環境調整の方法も個々人によって差がありますから、その子にあった環境を作ってあげることが大切です。

2020.06.03

相談はどこへ…その3

5、児童相談所
 児童相談所では、擁護相談、障がい相談、非行相談、育成相談、その他の相談を行っており、子供の問題に総合的に対応する機関です。相談は無料です。利用に際しては、地域の児童相談所に問い合わせください。

6、大学の相談室
 臨床心理士要請の大学院や教育学部がある多くの大学では相談室が設置されており、外来の相談を受け付けています。そうしたところでは、専門の大学大学教員や大学院生等が相談に乗ってくれます。また大学によっては、不登校生徒のグループや自宅へも訪問してくれます。相談は有料で、1回1,000~5,000円ほどです。各大学に問い合わせてください。

7、民間の相談機関
 民間の相談機関でも保護者や本人へのサービスを行っています。フリースクールも民間機関による不登校生徒へのサービス機関の名称です。料金やサービス内容は様々なので、電話で確認の上、利用を検討することをお勧めします。

8、通信制高校・サポート校
 小・中学校では不登校でも在籍できますが、高校では不登校は中途退学につながることが多く、その場合、通信制高校やサポート校への転校となることがほとんどです。各校、個々の生徒に合わせた様々なサービスを提供しています。本書の後半で詳しく紹介していますので、それを参考に積極的に検討してみてください。

これでひとまず、不登校についての情報は終わりになります。
次回からは神経発達症(発達障害)について更新してゆきます。

2020.06.03

相談はどこへ…その2

3、適応指導教室
  教育委員会が設置する、不登校生を対象とした教室です。カリキュラムは、個々の生徒の状況に合わせて比較的柔軟に設定して対応しています。カリキュラム内容は、各教室により様々です。登校が難しい場合自宅以外の居場所として、活用しやすい機関です。利用は無料です。詳しい利用法は、学校もしくは教育委員会に問い合わせてください。

4、ボランティア派遣事業
  不登校生徒の対応相手として、教育委員会が学生等を自宅に派遣してくれる事業です。多くの場合、数回の研修を受けたボランティアのお兄さんやお姉さんが週1回程度自宅を訪問し、話し相手や遊び友達になってくれます。費用は無料ですが、交通費等の実費がかかることもあります。自宅まで来てくれるので、ひきこもりの子供たちにも比較的対応しやすいですが、まだまだ実施しない自治体が多いのが難点です。学校や教育委員会に問い合わせてください。

2020.06.03

相談はどこへ

最近は、不登校への対応として、様々なサービスが準備されています。その代表的なものを紹介します。

1、スクールカウンセラー
  全国のほとんどの公立中学校および小学校と高等学校の一部にスクールカウンセラーが配置されています。臨床心理士等の専門家が学校に駐在しているので、利用しやすいサービスです。たの相談機関に行く前に手軽に相談してみたらよいでしょう。小学校はまだ配置されていない学校が多いのですが、校区の中学校のスクールカウンセラーに相談に行くことができるはずです。料金は無料です。利用の仕方については、担任や養護教諭、教頭(副校長)などに尋ねてください。難点は、多くの自治体が、週1回の勤務として配置しているので、その曜日に合わせて面談に行く必要がある、という点でしょう。

2、都道府県市区町村教育委員会の相談窓口
  全国多くの都道府県や市町村で、臨床心理士や指導主事などが相談に乗ってくれます。必要に応じて、学校への出張相談をしてくれる自治体もあります。料金は無料です。発達検査をしてくれてるかどうか、生徒への直接面接等をしているかどうかなど、サービスの内容は自治体によって様々です。学校か教育委員会に問い合わせれば、利用法を教えてもらえます。

2020.06.03

背景に家庭の問題がある場合…その3

虐待ほど深刻ではないにせよ、学校でこまっていいることが、モンスターペアレンツと呼ばれる保護者です。モンスターペアレントとは学校などに対して自己中心ともいえる理不尽な要求をする親を意味する言葉です。全国1万人の小中学校の校長を対象にして行ったアンケート調査によると、「保護者の利己的な要求」が深刻な教育の障害になっていると回答した校長は、中学校で28.9パーセント、小学校で25.7パーセント、「やや深刻」と答えた校長は中学校で48.9パーセント小学校で52.1パーセントとなっており、中学校の78.7パーセント小学校の77.8パーセントの校長が、保護者の利己的な行動を問題視しているという結果が報告されています。(金子元久 2006年度)。
不登校のケースでも、朝から子供を起こしに家庭まで来て欲しい、子供の学習の遅れを家庭訪問で補ってほしいなどといった理不尽...な要求もあります。
 こうした保護者に対しては、複数の教員で対面して対応することが原則です。電話での対応や1対1の対応では揚げ足を取られてしまうことがありますし、対応した教員が精神的に参ってしまうこともあります。教師のメンタルヘルスに問題が起こる場合、保護者とのトラブルが絡んでいることも少なからずあります。特定の教員だけが対応するということが内容にしましょう。
 
 また、特定の個人の責任と受け止めないように、対面指定いる場で結論は出さず、学校全体で協議をして対応するという姿勢を見せることも大切です。また、スクールカウンセラーなど第三者的な立場の人に入ってもらい、話をまとめてもらうのも有効でしょう。

 なお、話をした後は、必ず記録を取っておくこともお勧めします。最終的には、どんなクレームでも、司法などの第三者が見たときに、問題がない対応をしていることが大切です。そのためにも、面談場所と時間、対応者などと面談内容を細かく書いておき、何かあった時には提出できるようにしておくと、問題がこじれずに済みます。
 保護者の要求を全て受け入れる必要はありませんし、そうしたことは不可能です。相手に巻き込まれることなく、冷静に対応できる枠組みを、学校全体できちんと作って対応しましょう。

2020.06.03

背景に家庭内の問題がある場合…その2

まず、家庭の問題として深刻なのは、虐待が疑われる場合です。不登校の背景にもネグレクト(養育放棄)などの虐待が絡んでいる場合があります。虐待が疑われる場合には、虐待のチェックリストがありますので、それに照らし合わせてみます。そして、その可能性が高いと考えられる場合、まずは、生徒から詳しく状況を訊きましょう。ただ、子供は無意識のうちに親を守ろうとするので、ストレートにききましょう「お父さんはあなたに暴力を振ることがあるか」などと訊いても口を閉ざしてしまいます。まずは、どのような日常生活を過ごしているかをさりげなく訊きましょう。どんな食事を食べているとか、お風呂に入っているか、家は片付いているか、子供が悪いことをした時に、親がどのように子供を叱るのかなど、家庭の様子を聞きましょう。上手に聞けば、いろいろなことを話してくれるはずです。その際に、どんなにひどい状況でも、驚いたり親を責めるようなことは言わないようにしましょう。楽しそうに、普通の話をするように、興味を持って聞くことが大切です。できるだけ具体的に聴き、それを記録に取ります。そして具体的な内容が明らかになって、虐待のレベルであると判断されれば、児童相談所に通告することになります。通告は義務ですので、ためらう必要はありません。虐待の通告は、公務員の守秘義務よりも優先される事項です。通告しないことは、義務違反であり、違法行為であるということをきちんと理解しましょう。その後は、児童相談所と相談をしながら、その指示に従って動けばいいでしょう。

2020.06.03

背景に家庭内の問題がある場合

前項ででは、学校の問題に対して、家庭がどのように対応していくかを書き込みました。ただ、私自身は、不登校に関して言えば、学校側の要因により家庭側の要因の方が大きい場合が多いように感じます。保護者の中には、学校の責任を口にする方もいらっしゃいますが、実際には家庭での問題が大きく、家庭が変わる必要があるケースがほとんどです。多くの場合は、保護者自身も家庭の問題を自覚して変わっていこうとされますが、中には家庭の問題についての自覚がなく、学校を責めるだけの保護者もいます。 この章では教員の立場に立って
、そうした保護者にどのように対応していけばいいのかを説明します。

2020.06.03

学校での対応が不十分だと感じたら

学校での対応が不十分だと感じたら

学校での対応が、どう考えても不十分である、という時には、教育委員会に要望を上げることになります。教育委員会には学校への監督責任がありますから、教育委員会に要望することは不当なことではありません。きちんと要望を伝え対応してもらいましょう。教育委員会でも十分な対応をしてもらえない時には、司法に訴える必要が出てくる可能性が高いので、その際には弁護士に相談することをお勧めします。
 いじめや体罰は基本的人権に関わるものであり、学校が最優先に対応すべき内容でもあります。他の生徒たちがより良い教育を受けられる環境を作るためにも、保護者がきちんと学校側に訴えていくことが必要です。ただし、一方的に学校を非難するのではなく、学校と保護者が一緒になって良い学校を作っていくという姿勢は必要です。単なる非難になってしまうと、学校も守りに入りますから、一緒に学校を作っていくための努力をしていきましょう。

2020.06.03

いじめ・体罰があると感じたら

いじめ、や体罰がある、と感じられたら、まず、子供にできるだけ詳しく状況を訊きましょう。いつ、どこで、どのようなことがあったか、そこには誰がいて、どう関わっていたのかなどです。それをきちんと記録として書き留めましょう。もし、実際に子供が怪我をしたり、あざなどが見つかった場合には、病院に行って診断書をもらっておくことを勧めます。あるいは、写真に撮るなどして、残しておきましょう。

 そして、そうした記録を文書にして学校に渡し、きちんとした調査を依頼しましょう。保護者の中には、学校にクレームをつけるには申し訳ない、と考える方もいますが、これはクレームではなく要請です。学校の現状を教えてほしいと要請しているに過ぎない、と考えましょう。さらにいつまでにどのような回答が欲しいか、学校にどのように対応して欲しいかについてもきちんと伝えて回答を待ちます。解答は、文書でもらうようにしたほうがいいでしょう。もし、そうした手間を嫌がるようであれば、いったん口頭で回答をもらい、その回答を保護者側で文書にして学校に確認してもらう、という方法もあります。いずれにしても問題解決に向けて親が本気で要望しているという、親の本気度を伝えることが需要です。人の世は、言ったもん勝ちです。
言わないで我慢していては、何も変わりませんし、なかなか真剣に対応してもらえません。

2020.06.03

不登校の背景に学校内の問題がある場合の対応

不登校の背景に学校内の問題がある場合の対応

不登校の背景にいじめや体罰など、学校環境の問題が大きく影響している場合があります。こうしたケースでは、心のケアと同時に、学校での取り組みが重要になります。そこで、保護者の立場から、学校にどのようにアプローチをしていけばいいのかを説明します。
 いじめや体罰がマスコミに取り上げられる場合、いつも学校の隠蔽体質が問題になります。そして、学校の閉鎖性が攻撃されます。しかし、私自身は隠蔽体質や閉鎖性は学校の問題だとは考えません。人間はだれでも、自分と自分の身内を守ろうとします。これは善悪の問題ではなく、人間が持って生まれている本能というか、体質のようなものでしょう。逆に考えれば、自分を守れない人が、他者を守れるはずがない。また学校が、未成熟な子供のための教育機関であることを考えれば、その子供たちを守るために、ある程度の閉鎖性は不可欠です。ですから、学校に働きかける場合は、こうしたことを前提に考えていきましょう。

次回はいじめや体罰があった場合の対処法について

2020.06.03

クラスでの対応 …その2

クラスでの対応 …その2

クラスに本当のことを教えた後、寄せ書きなどを送ることもいいでしょう。学校に来れなくてもクラスの仲間だ、というメッセージを伝えることが重要です。ただし、友人が訪問するには慎重になる必要があります。不登校生徒本人の心理的負担になることがありますし、訪問する生徒にとっても、せっかく会いに行ったのに会えなかった、というのは心理的ダメージになることがあります。保護者と連携を取りながら、双方の生徒にとって良い出会いになるようにきちんとセッティングをしてから遊びに行くようにしましょう。
なお、第3ステージや第4ステージでは、クラス全体が仲間として受け入れる雰囲気を作って待つことが学校復帰に結びやすいので、そうした学級運営も大切です。不登校生の学級復帰には、学校と家庭が連携しながら、両面からの働きかけが大きなポイントになります。

2020.06.03

クラスでの対応。

クラスでの対応。

クラスの生徒には、出来るだけ本当のことを伝えることが大切です。嘘はどんな場合でも、いいい結果は生みません。不登校は体裁が悪いので、同級生には病欠と伝えてください、という保護者もいます。でも、本当のことは、何となく分かってしまう事が多いものです。休みの日や、放課後ショッピングセンターで姿を見かけたとか、不登校生徒自身が仲のいい友人に、病気じゃないから遊びに来て、と連絡することもあります。ですから、学校に行きたくても行けない状態であることを説明して、クラス全体で見守って、迎える為の準備をするようにクラスの雰囲気を作りましょう。ただし、本当のことを伝える為には、保護者と本人の同意、少なくても保護者の同意が必要です。クラスにどう伝えるかは、保護者と相談の上、慎重に進めて行くことが必要です。

2020.06.03

不登校 学校での対応  家庭訪問

不登校 学校での対応

 不登校の児徒に対して、教師がどのように対応していかなければいいのか、特に質問が多い、家庭訪問の方法及びクラスでの対応方法について、説明をします。

 家庭訪問

第2ステージにいる生徒たちは、訪問しても会ってくれないことも少なくありません。ここでは、そうした場合の具体的な訪問方法を述べましょう。

 まず、定期的に訪問することが原則です。曜日や時間を決めて、週に一回ぐらいが適当でしょう。彼らは、会えても会えなくても先生が来るというだけで緊張します。訪問が多すぎては疲れさせてしまいますし、いつ来るかわからないというのも生徒が心の準備をしにくいことになります。ですから、決まった曜日の決まった時間に訪問することが、生徒への負担を減らし、安心して先生と会える心理状態をつくるのです。
...
 生徒に会えない時はどうしたらいいのでしょうか。問題はありません。訪問した、と言うこと自体が大切なメッセージです。無理に会おうとしないほうがいいでしょう。また保護の中には、せっかく先生が来てくださっているのだから、子供に会うことを強要する人もいますが、それもしてはいけません。もし、保護者が会うことを強要したら、先生の訪問に悪いイメージを持つようになります。そのことを保護者にも伝えてください。また、会えない時には手紙を届けるのも有効です。でも、読むか読まないかは、生徒次第、返事は期待しないこと、手紙の中に返事を求めるようなことも書かないほうがいいでしょう。重要なのは、手紙を書くことにより、「あなたは学校にとって大切な生徒だ」というメッセージが伝わることです。

 こうした細かい積み重ねが、傷ついている生徒の心を癒して信頼を得ていくことに繋がります。

2020.06.03

ゲーム依存症

ゲーム依存症も、先ほどのわがままと一緒で、みたされない心を満たすためにゲームにはまっている状態です。ゲームをどうやってやめさせるかを考えるのではなく、心をどうやって癒して満たしていくかを考えて対応してください。そうすれば、ゲームをやめて、もっと建設的なことに時間を使うようになるでしょう。もちろん、ゲームにもアルコールやギャンブルと同じような依存性があると考えられているので、これは簡単ではないと思います。でも、依存症は治る病気です。焦らず正しく対応をしましょう。
 こうした問題以外にも家庭内暴力やリストカットなど、様々な問題がみられることでしょう。自分なりの判断で対応するのではなく、専門家と相談して正しく対応しましょう。

2020.06.03

わがまま

高価なものを買ってくれとか、あれをしろ、これをしろと保護者にいろいろと請求をしてくることがあります。そうしたわがままを聞いても、問題は解決しません。なぜわがままを言うのかというと、心が満たさせないからです。満たされない心を、物を手に入れたり、わがままを通すことにより満たそうとしているのです。でも、物やわがままでは、心は満たされませんから、保護者が要求を受け入れても、その時は気持ちは落ち着きますが、すぐに次の要求をしてくるようになりますし、その要求はだんだんエスカレートしていきます。ですからわがままを聞くのではなく、満たされずにいる心の苦しみを聞いてやり、心を満たしてやるようにしましょう。
具体的には、時間をかけて話をじっくり聞く(この時に反論したり、親の事情を説明してはいけません)、一緒にいる時間を増やす、本人がやりたいことを一緒にする(音楽を聴いたり、ゲームをしたり、DVDを観たりなど)、よしよしとベタベタするなど、身体接触を増やす。(いやがらなければ)、ということを心がけましょう。そうして満たされない心が満たされて来れば、自然とわがままも収まっていきます。

2020.06.03

昼夜逆転  その2

昼夜逆転  その2

 昼夜逆転は、それ自体を変えようとするのではなく、学校に無理やり行かされることはないことが分かり、昼間家に家にいることがリラックスできるようになれば、自然と改善されてきます。ただし、保護者が共稼ぎで、昼間家に誰もいない場合には、起きている必要もないので朝から起きない、と言う場合があります。一番いいのは、昼間誰か大人がいて、その人と一緒にいる時が一番リラックスできる、と感じさせることです。

2020.06.03

家庭での対応  昼夜逆転

家庭での対応

不登校を4つのステージに分けて説明しましたが、第2ステージである引きこもり期には、昼夜逆転やわがまま、ゲーム依存など、様々な問題が起こっています。そうしたことへの理解の仕方と対応方法について、本項で簡単に説明します。

 昼夜逆転
 不登校の場合、生活リズムが乱れて昼夜逆転になる子供も少なくありません。なぜ昼夜逆転するのでしょうか。

 学校に行けない子供たちにとって、一番辛いのは朝の時間帯です。朝起きたら、保護者は「あれ、今日は学校に行けるかしら」と思いますし、「せっかく朝起きたんだから、学校に行ったら」と言う保護者も多いと思います。直接そう言わなくても、学校に行って欲しいというオーラが出ているものです。また、本人も、今なら学校に間に合うなぁ、と思って葛藤を感じます。それが9時や9時半になると、「やっぱり学校に行くのは難しいな」と思って、保護者も本人も少し収まりが付きます。でも「今からでも学校に行けばいいのに」と保護者は思いますし、本人もそう感じています。それが、お昼ぐらいになると、「今日も学校に行けなかった」と気持ちが落ち着いてきます。さらに3時や4時になれば、もう学校に行くという選択肢がなくなりますので、気持ちは穏やかになります。では不登校の子供たちにとって、いつが一番リラックスできる時間帯かと言うと、親が寝てしまった夜中の時間帯です。ですから、つらい朝の時間帯を寝てやり過ごし、リラックスできる夜に生活するという昼夜逆転になるのです。

2020.06.03

第4ステージ 様子見期

第4ステージ 様子見期

 学校のことが気になって、学校に行くようになる時期です。でも、ここでも焦りは禁物です。無理をせず、本人のペースで登校できるように環境を整えましょう。教室だけでなく、相談室や保健室などの居場所を作ってやることや、登校の時間を配慮知ることが必要になる場合もあります。この時期に丁寧に対応していけば、だんだんと登校時間が伸びて、学校復帰へとつながります。

 以上が、不登校になってから登校できるようになるまでの大雑把な流れです。保護者の家庭での関わり方や教師の家庭訪問の方法など、それぞれの時期に合わせた対応の仕方がありますので、それは、もう少し詳しく後述します。ただ、細かい対応方法は違ってきますので、それぞれのケースに応じた具体的な対応については、スクールカウンセラーなどの専門家に相談しながら進めていってください。
 
 なお、不登校の背景に神経発達症(発達障害)があることも少なくありません。この場合は、神経発達症(発達障害)への適切な対応も必要になります。後日神経発達症(発達障害)への対応について記述させていただきます。

2020.06.03

第3ステージ 回復期

第3ステージ 回復期

 エネルギーが溜まってきて、家庭の中でも表情が明るくなったり、外に出られるようになったり、友人に会いたくなったりと、具体的に動き出してくる時期です。引きこもり期に適切に対応していれば、先生にも会うようになります。
 このステージになったら、友人や先生を通して学校の事情を伝えるなど、学校に来やすくなるように働きかけてみましょう。登校刺激をしても、大丈夫な時期に入ってきたということです。ただし、焦らないことです。まだまだ気持ちは不安定ですから、保護者は学校のことには触れず、心のケアを中心にかかわることが大切です。また外に出られるようになれば、買い物や遊びに行くなど、積極的に連れ出したり、家の中の手伝いをしてもらったりするのもいいかもしれません。また友人も遊びに来てもらえるように、友人の保護者に連絡を取るなどの工夫もしてみましょう。いずれにせよ、保護者と学校の先生と連携を取りながら、上手に役割分担を取っていけばいいでしょう。

2020.06.03

第2ステージ 引きこもり期 その2

第2ステージ ひきこもり期  その2

 この時期は、教師が家庭を訪問しても会えないことが少なくありません。しかし、定期的に訪問して、「先生も君のことを心配しているぞ」というメッセージを伝えることが大切です。先生が家まで来てくれる、ということが、生徒に対する一番のメッセージです。また、家庭訪問をすることは、保護者の、学校や教師への信頼に繋がります。ただし、この時期は、いわゆる登校刺激は避けたほうがいいので、生徒に会えたとしても、あまり学校の話はしないで、楽しい先生だな、いい先生だな、と感じてもらえるような話をしてあげましょう。また、友人が遊びにいっても会いたがらないことがあります。
友人が遊びに来たいと言っている場合は、あらかじめ本人の気持ちを確認して会えそうであれば来てもらうし、会うのが難しそうであれば、友人にそのことを伝えて、次の回復期に入ってから遊びに来てもらうようにしましょう。
友人と遊ぶのも、気を使うなどエネルギーが必要です。そのエネルギーがなければ、遊びに来てもらうこと自体が回復に対してマイナスに働くこともありますので、注意しましょう。このステージの子供に対して、どのように接していいのか迷う保護者や教師が少なくありません。これについてはもう少し詳しく後述します。

2020.06.03

第2ステージ ひきこもり期  その1

第2ステージ ひきこもり期  その1

 この時期の特徴は、子供によって様々です。それは、どこまでエネルギーが下がっているかによって違います。子供の部屋から出てこない、という本格的な引きこもり状態になることもありますし、家では変わらないけれど、外には出られない、あるいは学校が終わった夕方から休日なら外出できるという場合もあります。このように状態は様々ですが、学校に行けなくなった状態が第2ステージです。
 この時期は、ゆっくりと休ませることが重要です。エネルギー切れの状態ですから、焦って頑張らせても、かえって逆効果です。エネルギーが溜まってきて回復期に入るまで、ゆっくり待ってやりましょう。
この時期は、昼夜逆転や家庭内暴力などで大変になることもありますし、このまま20代・30代まで引きこもりが続くのではないかと不安に感じることも多いかと思います。精神障害や、神経発達症(発達障害)がない限り、適切な対応をしていけば、問題行動は軽減していきますので、専門機関に相談し、家族全体で適切な関わりを行いましょう。

2020.06.03

第一ステージ

第一ステージ

 このステージの特徴は、学校に行きたがらなくなる、朝から起きられなくなり、ぐずぐずして遅刻をする、月曜日や体育などの、特定の曜日や科目がある日に学校に行けなくなる、体調不良での休みが多くなる、などです。この時期は、先に記した心の風呂桶が溢れ始めている状態。まだ完全にあふれていないので、この時期にきちんと対応すると、本格的に溢れずに学校に行けるようになります。
 このステージの対応は、無理に学校に行かせようとはせず、きちんと話を聞いてることです。少しぐらい遅刻しても、様子を聞いてやりましょう。また、生活全般を見直して無理をさせず、家の中でリラックスできるように心がけましょう。
 この時期には、学校に行くと元気に過ごせ普段と変わりない、という場合が多いので、教師にもそのことを伝えて、普段より丁寧に対応してもらいましょう。最初のSOSを見過ごさずにキャッチするためにも、家庭と学校の連携が必要です。

2020.06.03

4つのステージとその対処法

学校に行けない生徒たちには、学校の話をしないほうがいい、と聞いたことがあるかもしれません。学校刺激は良くない、とも言います。その一方で、教師の中には不登校の生徒を家に迎えに行って、学校まで引っ張ってきたら、最初は嫌がっていたけれど、それがきっかけになって学校に来るようになった、と言う教師もいます。登校刺激はしないほうがいいのか、しても構わないのか、どちらが正しいのでしょうか。
 どちらが正しいのではなく、その生徒の状態による、というのが正確な言い方です。不登校への対応は、今どういう状態なのかによって、柔軟に変えていく必要があります。私は、その目安として、次のような説明をします。

2020.06.03

環境調整と心のケア

環境調整と心のケア

環境調整と心のケアのためには、何をしていけばよいのでしょうか。
 まずは、環境ですが、生活の見直しをしましょう。塾やお稽古事で無理をしていないか、部活動や勉強で頑張りすぎていないか、友達関係や家庭内で我慢しすぎていないか、などです。特に、親にとって手がかからない良い子、という場合には我慢して頑張っている場合が多いいので、要注意です。

 心のケアとしては、スクールカウンセラーや教育相談室に連れて行くことも良い方法ですが、それ以上に家庭の中で癒されることが大切です。親がきちんと話を聞いて気持ちを受け止めることはもちろん、両親や祖父母など、家の中の大人が仲良くしていること、家の中をきれいに片付けること、美味しい食事を作ることなど、家庭の居心地をよくして、癒しの家庭を作ってください。

2020.06.03

心の問題への対応 その3

多くの保護者や教師、は問題行動自体を何とかしようとします。ですから、学校に行けなくなった理由を聞き出して、その理由を解決しようとします。友人関係が原因なのか、いじめがあったのか、教師の対応が悪かったのか、そうした不登校になった理由がわかれば、友達と仲直りする、いじめた側が謝る、教師の対応を改める、などの対応をしていきます。しかし、そうした対応では解決できない場合もすくなくありません。それは、そうした一見原因とも思われることも、本当は心の風呂桶が溢れる最後の一杯のストレスに過ぎないことが多いからです。単なるきっかけです。ですから文科省の調査でも「きっかけと考えられる状況」という言い回しをするのです。大切なことは、心の風呂桶にたまり、溢れだしたストレスを減らしていくことですから、そうしたきっかけに振り回されずに、環境調整と、心のケアを行ってください。ストレスの水位が下がってくれば、自然と問題行動も改善し、消失していくことでしょう。

2020.06.03

心の問題への対応その2

では、溢れないようにするには、あるいは、もし溢れて問題行動として表れてしまったら、どうしたらよいのでしょうか。解決法はとてもシンプルです。まずは、入ってくるストレスを減らすこと、もう1つはストレスがきちんと流れるようにすることです。入ってくる量が減って、流れ出す量が増えれば、溜まっていたストレスは自然と減っていきます。そして、ストレスが減っていった分だけ状態は改善し、問題行動が消失していくようになります。この入ってくる量を減らしていくことを「環境調整」、流れ出る量を増やしていくことを「心のケア」と呼びます。

2020.06.03

心の問題への対応

心の問題への対応

不登校等の問題行動は、心の風呂桶があふれた結果だ、と説明しました。では問題行動にどのように対応すればよいのでしょうか。
 まず、大切なことは、問題行動を予防すること、つまり「心の風呂桶」があふれないようにするということが大切です。そのためには、子供たちの心の風呂桶の中のストレスが、どの程度溜まっているのかを、いつも意識していることが重要です。
ストレスが溜まってくると、SOSが出ます。「溢れそうだから助けてくれ!」という信号です。これをストレス反応と言いますが、大きくは3つあります。
1つは、無気力です。何事につけてもやる気がなくなる、やらなくてはならないこともやれなくなる、といった状況です。2つ目はイライラです。親に口答えするようになる、弟や妹をいじめる、物に当たるようになるというように、ちょっとしたことでイライラするようになります。3つ目は身体症状です。お腹や頭が痛い、体がだるい、風邪がなかなか治らない、夜眠れないなど、体に不調がでてきます。こうした「無気力」「イライラ」「身体症状」が現れてきたら、注意して、溢れないように対応してください。

次回はその対応法を更新していきます。

2020.06.03

不登校になる理由・・・2

不登校になる、さらに深い理由をどのようにかんがえたらいいのでしょうか。
 私は(臨床心理学者)これまでスクールカウンセラーとしてたくさんの児童生徒と接してきた中で、「心の風呂桶理論」という考えで、不登校の理由を説明しています。「心の風呂桶理論」を紹介しましょう。

まず、心の中に風呂桶があると考えてください。普通の風呂桶は、お湯を溜めてお風呂に入るわけですが、心の風呂桶はストレスを溜めます。勉強、人間関係、先生との関係、部活、塾、親子喧嘩、家庭の経済状況など、たくさんのストレスが入ってきます。そうすると、風呂桶にお湯が溜まるようにストレスが溜まっていきます。
 普通風呂桶は、お湯を溜めるだけではなく、お湯を流すための線があります。同じように心の風呂桶にも栓があり、それを開くとストレスが流れていきます(ストレスの解消・発散)。私たちは、普通の風呂桶にお湯を溜めたり流したりするように、心の風呂桶のストレスを溜めたり、流したりしています。心の風呂桶に入ってくるストレスよりも、流せるストレスの量が多ければ、ストレスは一時的に溜まっても流すことができますから、ストレスを溜めこみすぎず、うまく調整ができます。でも、入ってくるストレスの量が流せる量よりも多くなると、ストレスを流しきれなくなって風呂桶に残ってしまうことになります。そうなると、流しきれずに残ったストレスが、時間の経過とともに溜まっていきます。それが、ある時一杯になって心の風呂桶からあふれ出すようになります。それが、問題行動と言われる形になって現れます。ある生徒はがっこうに行けなくなり、引きこもったり、ある生徒は家に帰ってこなくなり、飲酒や喫煙といった非行行動となります。問題行動の内容は、各児童・生徒の個性や環境によって様々ですが、その問題行動の原因は、お風呂からストレスがあふれ出た結果だ、と考えればいいのではないかと思います。

次回は心の問題への対応について更新していきます。

2020.06.03

不登校になる理由・・・1

前項で、不登校の現状を見ました。深刻さをわかっていただけたかと思います。では、なぜ子供たちは学校に行けなくなる、あるいは行かなくなるのでしょうか。

 文部科学省は、「不登校のきっかけとなると考えれらる状況」についても調査をしています。以下がそのベスト5です。
①不安などの情緒的混乱
②無気力
③いじめを除く友人関係をめぐる問題
④親子関係をめぐる問題
⑤遊び・非行
 この結果をどう思われますか? 1位と2位はわかるとしても、いじめが入っていないことや4位に親子関係が入っていることは、意外に感じるかもしれません。ちなみにいじめはベスト10にも入っていません。

 ところで、ここで注意しなくてはならないのが、この調査のタイトルが「不登校のきっかけと考えられる状況」となっていることです。不登校の原因と言うタイトルではありません。なぜ、きっかけと考えられる状況などともってまわった言い方をしているのでしょうか。それは、不登校の本当の理由がよくわからないからです。友人との喧嘩がきっかけで学校に行かなくなる生徒もいますが、ひどい喧嘩をしても学校に平気で通う生徒もいます。勉強についていけなくなくて学校がやになる生徒もいれば、勉強がわからなくても楽しく学校に来る生徒もいます。ですから、文部科学省でも、多くの場合、様々な要因が重なることにより不登校になるのであり、調査で出てくる理由は、不登校になるきっかけに過ぎないため、“きっかけと考えられる状況”というような表現にしているのです。

2020.06.03

不登校と登校拒否の違い。

不登校と登校拒否の違いですが、これは用語の違いであって、文部科学省は同義語として使用しています。厳密に言うと、1998年に、それまで使っていた登校拒否を不登校と読み替えるとし、不登校が正式な行政用語となりました。ちなみに、登校拒否という言葉が使われるようになったのは、1960年代の半ばぐらいですが、それ以前は学校恐怖症という言葉も使われていました。
 では現在、不登校の生徒は、どれくらいの数になるのでしょうか。

 文部科学省が発表した平成22年(2010)「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、小・中学校における不登校生徒数は、小学校21,675人(前年度22,327人)、中学校93,296人(前年度100,105人)の合計114,971人(前年度122,432人)で、在籍者数に占める割合は小学校0.32パーセント(前年度0.32パーセント)、中学校2.74パーセント(前年度2.77パーセント)の合計の割合で1.14パーセント(前年度1.15パーセント)となっています。生徒数減少に伴い、実数は減っていますが、割合としては、ほぼ前年度並みです。 ちなみに、ここ10年、不登校生徒の割合は、ほとんど変わっていません。区市町村による適応指導教室、相談事業の拡充や校内での相談体制の充実を進める中、出席扱いになりながら教室には入れない生徒が増えていることを考えると、教室には入れずにいる生徒の割合は、実際には増えていると推測されます。
 また、高等学校における不登校生徒数は、平成22年度で53,084人(前年度51,728人)で、在籍者数に占める割合は1.66パーセント(前年度1.55パーセント)不登校生徒のうち中途退学に至った者は16,626人(前年度16,629人)となっています。中学校に比べると割合は低いのですが、高校中退となった生徒は、翌年は不登校にカウントされなくなるのですから、状況は中学校よりもさらに深刻である、と考えてもいいでしょう。

 さらに細かくみていくと、小・中学校では、学年が上がるほど不登校は増えていきます。中学校1年生の不登校生徒数は21,084人ですが、中学3年生では38,631人と約1.8倍になっています。これが高校生では、逆に高校1年生が17,159人に対して、高校3年生は8,288人と約半分になります。(この人数の中には単位制高校の不登校数は含まれません)。

 以上、不登校の現状を概観しましたが、どうでしょうか。小・中・高合わせて約17万人の不登校生徒がいて、教室に入れない者の数はさらに多くなります。県庁所在地で言えば、松江市、甲府市、山口市、鳥取市あたりが人口20万人程度ですから、地方中核都市と同じぐらいの人数の子供たちが不登校になっている、と考えてもいいでしょう。これは、かなり深刻な数字ですね。

次回は不登校になる理由について更新していきます。

2020.06.03

不登校って何?

不登校、という言葉が、日常語になってきています。小学生でも不登校と言えばわかりますし、不凍港を不登校と聞き違えることはあっても、その逆はないでしょう。また、登校拒否という言葉も聞いたことがあるかもしれません。しかし何日間以上休んだら不登校というのでしょうか。あるいは病気で長期欠席しても不登校と呼ぶのでしょうか。普通に使われるようになった不登校ですが、正確な意味は意外と知られていないようです。まずは、不登校は何を意味するのか、また不登校の児童・生徒が何人ぐらいいるのかから始めましょう。
 ところで、文部科学省では、小学生を児童、中・高校生を生徒と呼び分けますが、不登校は中学生に多いこともあり、ここでは便宜上まとめて生徒と表記します。
 まず、不登校の定義です。文部科学省では、不登校を次のように定義すています。
・不登校とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)をいう。
 この定義を見れば、病気で休むことを不登校と呼ばないことがわかります。また、この定義では、欠席日数については書かれていません。1日や2日の欠席であれば、その児童生徒の状況の把握は難しいので、統計を出すときには、30日以上の欠席者を不登校としてカウントしています。定義上はともかく、通常は1ヶ月以上ぐらい休みが続けば不登校状態だ、と考えるのが普通でしょう。

次回は不登校と登校拒否の違いや、現在の不登校の状況について更新いたします。
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