言葉が独り歩きした「発達障害」
過日新聞に目を通していたら、【「発達障害」言葉が独り歩き】という小児科医 成田 奈緒子先生の記事が目にはいった。そうだよねと、一気に読み込みその通りだと納得した。近年「発達障害」ということばを良く耳にする。学校でも、幼稚園や保育所、会社、街中と「あいつ発達系だよね」と仲間同士で陰口を言ったり、「○○ちゃん発達障害ではないでしょうかね。」と、幼稚園の先生や保育所の保母さんに医療機関の受診を進められ、保護者が不安になり慌てて医療機関を探した話を聞く。
ここ10年あまりで一気に「発達障害」といわれる人が上昇した。成田先生は、文科省の調査の結果だけを見ると、発達障害の可能性がある子どもは、2006~2019年の13年間で10倍に増えたことになるという。でもこの調査は専門家が行ったものではなく、主観的に「可能性がある」と評価した結果が反映されたものだそうだ。専門家は、綿密に生育歴や診断基準に照らし合わせ行動や情緒障害などについて見極めるそうだ。成田先生は、「発達障害というレッテル」を貼られることで、親が不安に陥ったり虐待が起きてしまうことを懸念し、安易に診断はしないと述べられていた。また、成長期の子どもの脳は、柔軟で現在の状態がずっと続くものではなく良質な睡眠と生活のリズムの安定が大事であることも指摘していた。
また、小児科医の鷲見 聡先生も「発達障害の謎を解く」という本で、発達障害ブームを振り返っての文中で、発達の多様性に対する許容範囲が狭くなっているようだと指摘している。例えば、ADHDと診断されたお子さんが年齢を重ねる毎に大きく変化し衝動性が減少して行き、社会生活上適応していく例も多くある反面、ネガティブな体験を積むことにより逆に不適応状態が深刻になる例もあると述べている。
多様な神経発達症郡(発達障害)だからこそ、早期から親子の精神的安定と愛着形成、集団生活のルールや生活習慣を身につけるための支援が大切であると述べられていた。
かって、小学校入学に際しての就学相談で、有名なミュージッシャンのお子さんが「多動と注意散漫」の主訴で来室されたが、保護者の話では夜遅くまでミュージッシャン仲間が出入りし、子どもの安定した睡眠がとれてなかったことが、昼間の子どもの行動に影響していたことが分かった。
生活リズムの安定と、親が子に自己肯定感を育むような関わりが大切であることを強く感じた例である。生活リズムを改善したが、どうしても日常生活に支障をきたすような場合には、医療機関に相談したり福祉の支援を活用するのが適切であると思う。子どもの成長には個々に特徴があり、伸び幅も違っていると思うので、親が慌てて心配のあまり先にいろいろ動き回るのは、理解できるが、二次的な精神障害にもつながっていく例も多々あるので、子どもにじっくり関わりながら愛着形成を築いていく必要があるのでは無いかと思う。
文責:21世紀教育研究所 向井 幸子